右目は左脳、左目は右脳、ではありません

投稿者: | 2017年3月7日

 

意外に多いビジネス書での脳科学情報の誤り

ビジネス書でも脳科学を参考にしたものが結構ありますね。

ただ、誤った記述を目にすることが割とあるので、ときどき手にしてチェックしています。

脳科学が正しく使われているかの市場調査というわけです。

 

先日、ビジネス書を読んでいて、中国の諺らしい「左図右書」が取り上げてられているのを目にしました。

左目で図を見て、右目で文を見るとよい、という意味だそうです。

で、問題なのはその根拠。

左目は図形を処理する右脳につながり、右目は文章を処理する左脳をつながっているからだと。

その根拠はトンデモだと思った方、素晴らしい!

脳科学リテラシーがおありなので、以下は読まなくても大丈夫です(笑)。

え?どこがおかしいの?と思われた方、私(武永)と一緒に勉強していきましょう!

 

「左視野」は右脳に、「右視野」は左脳で処理される

脳と身体を行き来する神経は、脳の一番下の部分に当たる延髄で左右が入れ替っています。

そのため、右脳で脳梗塞が起きたりすると、反対の左半身に麻痺が出るわけですね。

では、目から脳への伝達経路はどうなっているのでしょうか?

網膜で受けた視覚情報は電気信号に変えられて、視神経を通って脳に送られます。

右目と左目がありますが、手や足と同じように、右目で受けた情報は左脳に、左目で受けた情報は右脳に送られる、、、のではありません。

正面を見据えたときに、中央から左半分を左視野、右半分を右視野と言います。

光は目のレンズ(水晶体)で屈折して、上下左右が逆になって網膜に映ります。

そのため、左視野は網膜の右半分に、右視野は左半分に映ることになります。

そして、網膜の右半分に映った情報は右脳に、左半分に映った情報は左脳に送られます。

網膜から脳への経路では左右は入れ替わりません。

従いまして、目の左右によらず、左視野の光景は右脳で、右視野の光景は左脳で処理されることになります。

要は、右目も左目も、視覚情報は右脳と左脳の両方で処理されるのです。

さらっと書きましたが、ちょっと複雑ですので、以下のサイトで図をご確認ください。

WIKIVERSITYのサイト

紫色で示された左視野の情報が右脳に、黄緑色で示された右視野の情報が左脳に送られる様子がお分かりいただけるかと思います。

右目の左半分の網膜に映った右視野の視覚情報を左脳に送る神経線維と、左目の右半分に映った左視野の視覚情報を右脳に送る神経線維がクロスすることになります。

そのクロスするところを視交叉と言います。

上のサイトの図では、眼球の後ろに伸びる線が視神経で、視神経の交叉しているところが視交叉です。
動物によって交叉パターンは様々

ちなみに、上記のように、片目の情報が右脳にも左脳にも送られているのは、哺乳類がほとんどを占めます。

動物によって、交叉する視神経の比率に違いはありますが。

それより下等な動物(爬虫類、両生類、魚類)は、右目の情報は左脳だけ、左目の情報は右脳だけに送られる「完全交叉」であることが多いです。

おもしろいことに、成長の過程で交叉の様式が変わるものもあります。

例えば、カエル。

カエルはオタマジャクシのときは完全交叉、つまり、右目の情報は左目だけ、左目の情報は右目だけに送ります。

ところが、カエルに成長すると、哺乳類などと同じように一部は反対の脳にも送られるようになるのです。

目から脳への伝達経路を正しく知っていれば、冒頭で紹介しました、左図右書の根拠としていたビジネス書の「脳科学との関連」が間違っていることはすぐに分かります。

もしくは、オタマジャクシに向けて書かれていたのでしょうか?(笑)

 

脳科学に根拠を求めて信憑性を高めようとしたのでしょうが、にわか知識で逆に著者の信憑性を落としてしまう結果になっています。

読者として騙されないよう、また反対の立場として、にわか知識を提供して自身の信憑性を落とさないためにも、このブログなどで脳科学リテラシーを高めていただけたらと思います。

 

脳科学でビジネスライフを快適に!

では、また!

 

(了)

 

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