脳の機能局在
手や足が動くのは、前頭葉の後部にある運動野から手足の筋肉に指令が出されるからですね。
目から受け取った視覚情報は、後頭葉の視覚野で処理されます。
耳で受け取った聴覚情報は、側頭葉の聴覚野で処理されます。
皮膚の触覚は、頭頂葉の体性感覚野で処理されます。
大雑把に書きましたが、脳の領域はもっともっと細分化され、それぞれの領域がどんな役割を持っているのかを、世界中の研究者が調べています。
このように、それぞれの領域で担当する役割が決まっているのを、機能局在と言います。
役割分担をして、効率よく処理しているのですね。
脳の可塑性と機能代償
脳梗塞や脳出血で、脳の特定の領域が損傷を受けると、その領域の機能が発揮できなくなります。
しかし、脳は柔軟で、損傷した領域の機能を周りの領域が肩代わりすることもあります。
このような肩代わりを「機能代償」と言い、また、脳の柔軟なこの性質を「可塑性」と言います。
脳の配線を自発的に自動的に変えるのですね。
脳って、すごい。
脳梗塞などで手足に麻痺が出た時にリハビリをして改善するのは、この可塑性によります。
可塑性にも限界がありますので、損傷した領域の機能が完全に補完されるのは難しいです。
小脳について
ところで、冒頭で脳の領域として、前頭葉・後頭葉・側頭葉・頭頂葉を挙げましたが、これらはまとめて大脳皮質と呼ばれます。
大脳の後ろの下側には、比較的小さい「小脳」という領域、というか塊もあります。
脳には860億個ものニューロンがあると考えられていますが、その8割がこの小脳にあるとされています。
体積としては脳の1割くらいの小さい領域にたくさんのニューロンが押し込めてあるのも不思議ですが、どうしてそんなにたくさんのニューロンが一体何をしているのか、まだよく分かっていません。
主に運動機能に関わると考えられていて、運動の調節や、自転車の乗り方などの運動プログラムを記憶しておく役割があるようです。
また、平衡感覚などの感覚にも関わることが分かっています。
小脳がなくても普通に生活できる!? (小脳無形成)
普通に生活をしていて、小脳がいきなり機能しなくなったら、機能代償の規模を遥かに超えているので、体を動かせなくなることは容易に想像できます。
小脳が生まれつき無かったとしたら、一生、介護が必須のように思われます。
ところがところが、中国で生まれつき小脳が無いのに割と普通に生活してきた24歳の女性が見付かりました。
20年以上にわたって眩暈(めまい)や歩きにくさがあることと、ここ1ヶ月で吐気や嘔吐があると訴えて病院を受診。
検査の結果、小脳が全く無い「小脳無形成」であることが判明したのでした。
走ったり、ジャンプしたりもできませんし、4歳までは補助なしでは立てず、7歳までは歩けなくて、話もたどたどしかったりして、学校には行かなかったのだとか。
でも、彼女は結婚していて、娘も一人いて、妊娠・出産も普通だったそうです。
大脳や脳幹が小脳の役割を機能代償したのでしょうが、具体的なメカニズムかは謎。
もともと無いわけですから、一旦できた脳の一部が傷害を受けたときの機能代償よりも最初から大胆に可塑性が働いたのでしょうね。
小脳無形成の症例報告もありますが、ここまで普通に生活してきた人は珍しいようです。
脳のスゴさを改めて見せつけられた感じです。
私たちの脳は、想像を超えてタフにできています。
こんなにスゴい脳を持った私たちですから、頑張ればいろいろなことも何とか乗り越えられそうな気がしませんか?
【原論文】
脳科学で生活にうるおいを!
では、また!
(了)
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