脳は、快楽を求める
ヒトと他の動物の違いはどんなところにあるでしょうか?
教科書的には、ヒトは快楽にあまりとらわれることなく理性的に考え行動できる、といったところですかね。
それを裏付けるかのように、ヒトの脳は理性を司る前頭葉の比率がもっとも大きくなっています。
しかし、実際には、快楽に流されてしまうことが結構多いですよね?
むしろ、快楽に流されてしまうものなのだと考えた方がよいでしょう。
市場競争では、似たり寄ったりの商品やサービスの中から、いかに自分のものを選んでもらうかが問題になります。
そこで、差別化のために付加価値を付けようとしますし、確かに、差別化も必須ではあります。
もちろん、お客さんは付加価値を含めたスペックを理性的に検討はします。
しかし、実際には、最後の最後で決め手となるのは、商品のイメージがほんのちょっとよいとか、営業マンのほんのちょっとした印象の差だったりします。
どうしてでしょうか?
スペックに現れる微妙な差を理性的に判断して得られる快楽よりも、感覚的なイメージや印象の方がより強い快楽を与えてくれるからです。
ヒトは、思ったより快楽を求めるもの。
例えば、ヒトは、一日の中でたくさんの判断をしています。
仕事上の判断だけでなく、今日はどんな服で行こうかとか、そろそろお昼に行こうかなど、日常的で些細なものも考えると、行動全体が判断の連続とも言えます。
今日一日のたくさんの判断を振り返ってみて、多少とでも快楽につながる判断と、全く快楽につながらない判断でどちらが多いでしょうか。
全く快楽につながらない判断は意外に少ないことに気付かれると思います。
快楽を求める力、恐るべし
快楽というのは予想以上に絶大な力をもっています。
これを確かめた動物実験があります。
1954年のこと。
心理学者のオールズとミルナーは、ラットの頭を開けて、脳の辺縁系(septal area)という少し深い所に針電極を刺しました。
脳科学の実験では、針電極がよく使われます。
研究現場では、手間がかかるのと、データが集まりにくいので、敬遠される傾向にありますが。。
針電極の使い方には2種類あります。
1つ目は、電流を流して、針電極の先端あたりの脳領域を刺激する。
2つ目は、針電極の先端付近にある個々のニューロンの活動を記録することで、細胞外記録法とか、ユニット・レコーディングと呼ばれます。
オールズとミルナーの実験では、1つ目の刺激用として針電極は使われています。
ラットを入れた箱にはレバーがあって、ラットがそのレバーを押すと、脳に刺した針電極から電流が流れて辺縁系を刺激するようになっています。
ラットはどうなったでしょうか?
なんと、ラットはエサを食べることも忘れて、レバーを押し続けたのです。
快楽中枢発見の瞬間でした。
快楽は食欲をも凌駕するのですね。
脳の快楽の座、報酬系
ヒトの脳にもそれに似た領域があります。
報酬系(A10神経系)と呼ばれ、いくつかの脳領域から構成されます。
そのスタートは、腹側被蓋野(ventral segmental area, VTA)で、東大の池谷裕二氏はそこのことを「テグメンタ」を呼んでいますね。
神経伝達物質として、快楽物質のドーパミンを放出するニューロンがたくさんあります。
腹側被蓋野のニューロンが情報を送る先(ドーパミンを放出する先)は、側坐核(nucleus accambens, NA)、海馬、(hippocampus)、眼窩前頭皮質、内側前頭前皮質など。
快楽を感じるとき、これらの脳領域の活動が強くなっています。
オールズとミルナーが実験したラットの辺縁系に相当する領域に重なります。
ご自身の商品やサービスを選んでいただくためには、そのものの魅力をアピールするだけでなく、ちょっとしたことでもよいので、いかに快楽を感じてもらえるかが鍵となります。
(了)
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