「脳研究」は最近登場した言葉
前回は、脳科学者は「脳科学」という言葉に慣れていないというお話でした。
「脳科学」という言葉は、いつごろ登場したのでしょうか?
行政や脳関係の出来事などの流れをざっと振り返ってみましょう。
1987年8月
科学技術会議が「脳・神経系科学技術の基本方策に関する意見」をまとめる。
1990年
アメリカの議会が、「脳の10年」を決議し重点研究を開始。
1992年6月
小川誠二博士らが fMRI をヒトに適用。(掲載雑誌:PNAS)
1993年
NHKで「驚異の小宇宙 人体II 脳と心」が放映。
1996年
玉川大学学術研究所に脳科学研究施設を開設し、2007年には「脳科学研究所」を設置。
1997年
アメリカを追随すべく、日本でも脳科学に予算が重点配分され、「脳の世紀」が始まる。
1997年10月
理化学研究所に「脳科学総合研究センター(RIKEN Brain Science Institute、理研BSI)」設立。
2007年11月
文部科学省の科学技術・学術審議会で学術分科会に「脳科学委員会」が設置。
上記の荒い年表でははっきり判断できませんが、どうやら「脳科学」という言葉は 1990年代に出現したようです。
あやしい「脳科学者」と神経神話
世の中の脳への関心の高まりとともに、あやしい「脳科学者」が専門家としてもてはやされ、テレビや本で科学的根拠に乏しいの疑似科学としての「脳科学」情報があふれてしまいました。
あやしい「脳科学」というのは、例えば、以下のような感じ。
・右脳人間/左脳人間
・男脳/女脳
・普段は脳の10%しか使っていない
・脳に大事なことは3歳までに決まる
テレビやネットでよく目にしますよね。
実は、これらは、2007年、OECD(Organization for Economic Cooperation and Development、経済協力開発機構、本部:パリ)が神経神話、つまり、疑似科学であるとして認定しています。
藤田先生@阪大のサイトも参考になります。
「脳の迷信・脳のうそ 〜神経神話を斬る〜」
大阪大学大学院 生命機能研究科 認知脳科学研究室(藤田一郎教授)
ここで、「神経神話」という耳慣れない言葉が出てきましたね。
「neuromyth」の直訳で「神経」神話なのであって、「脳科学」神話ではありません。
それくらい、脳科学(brain science)はまだ世界的にもマイナーな言葉であることが分かります。
もっと業界の話になりますが、心と脳は違うという観点から、脳科学という表現を嫌う研究者(特に、心理学系)も少なからずおられたりもするようです。
あやしくない「脳科学」へ
2012年7月には「日本脳科学関連学会連合」が設立されました。
これは、日本の脳科学を発展させるため、国内の脳科学関連の学会が連携することになったのを受けてのことで、23の学会(2017年1月現在)が加盟しています。
近年、脳科学を冠した研究所や研究科も増えてきました。
これからは、専門家も「脳科学」という言葉に馴染んでいって、あやしくなくなることでしょう。
脳科学でビジネスライフを快適に!
では、また!
(了)
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