行動随伴性から考える物忘れ防止法

投稿者: | 2016年11月7日

 

いきなりですが、問題です。

地下鉄の忘れ物で第1位は何だと思われますか?





答えは、「傘」。

まあ、そうだろうなって感じですが、なぜ、忘れてしまうのでしょう?

とても重要な理由の一つ。

それは、、、

地下鉄のホームは、雨が降っていないから。

あれ? 今、苦笑いされました?(笑)

これ、結構、真面目な話なのです。

 

トイレから出るときに電気を消し忘れやすいワケ(行動随伴性)

例えば、家のトイレに行くとき、電気をつけて入りますね。

つけ忘れることは、ほぼありません。

でも、出るときには電気を消し忘れることがときどきありませんか?

「誰?つけっぱなしにしてるのは?」と私(武永)も家族から言われたりします。

入るとき、トイレは暗いですが、電気をつけると明るくなって用が足せます。

(行動)電気をつける

(変化)トイレの中が明るくなる

このように行動で状況の変化がするのを、心理学では「行動随伴性」と言います。

この行動随伴性が、行動する強化因子になって行動が習慣化します。

では、トレイを出るときは、どうでしょうか?

トイレの電気を消しても消さなくても、トイレの外の状況は変わりませんね。

行動随伴性が存在しないので、「消す」という行動を取ることに気付きにくいのです。

ちなみに、このように行動面に着目したアプローチを「行動分析学」と言います。

 

電車で傘を忘れやすいワケ

電車で傘を忘れる問題を考えてみましょう。

雨の日、地上で屋根なしのホームに降りるときは、傘をさす行動により濡れずにすむという行動随伴性があるので、傘を忘れることは、まずあり得ません。

しかし、地下鉄のホームはどうでしょうか?

雨が降っておらず、傘をさして濡れるのを防ぐという行動随伴性がないため、傘を忘れてしまいやすいのです。

私たちが気付きにくいというのは、記憶力の問題だけではなく、このような行動随伴性も大いに関係するのです。

 

忘れにくくするためには行動とリンクさせる

では、電車で傘を忘れないようにするには、どのような手を打てばよいでしょうか?

1)忘れる機会自体をなくす

・傘をずっと手に持っておく

どこかに置くから忘れてしまうわけで、忘れる機会自体をなくしておけば大丈夫。

2)次の動作の際に自動的に気付く仕組み

・座席に座るときバッグに引っ掛けるとか、男性なら両足の間に置くとか。

座席の端に座ったとき、手すりにぶら下げたり立てかけがちですが、それですと、降りるときに気付きにくいですよね。

ということで、降りるときの動作で気付かせる仕掛けを考えましょう。

折りたたみ傘なら、膝の上のカバンに傘を乗せておくのもよいですね。

3)認知的なアプローチ

・持ち物の数を数えておく

「荷物は、バッグと手土産と傘の3つ」と数えておくと、降りるときに気付きやすくて、忘れにくくなりますね。

忘れやすいなと思ったら、行動随伴性など、そのメカニズムを分析し、記憶に頼らない行動とリンクした対策を立てましょう。

 

【お勧め本】

杉山尚子『行動分析学入門』(集英社新書)ーー ヒトの行動の思いがけない理由

 

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では、また!

 

(了)

 

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