つらいことがあったとしても、無理をして頑張っていませんか?
少なくともその直後は無理をしない方がよさそうです。
特に、頑張り屋さんは気を付けないと。
今回は、そんなお話を。
汎化とPTSD
ヒトの脳には、汎化という機能があります。
条件付けされた刺激だけでなく、関連した刺激や条件でも反応や学習効果が起こることです。
全くそのものでなくとも共通点を見つけて、関連するものにまで反応するようになるのですね。
応用が効くという良い面もありますが、逆に困った面もあります。
例えば、メガネをかけたお医者さんに注射を打たれて怖がった子どもが、メガネをかけた人を見ただけで怖がるようになるとか。
ところで、PTSDは、Post Traumatic Stress Disorder の略で、心的外傷後ストレス障害のことです。
虐待や災害など、命に関わるような体験して非常に強いトラウマを受けてしまい、その体験から何年経っても、当時を思い出して恐怖感情に襲われたり、関係する状況を極度に避けたりして、日常生活に支障が出る症状のことです。
最近では、命にかかわるほどの重大な事案ならずとも、深く傷付く体験によって、PTSDのような症状が起こると考えられているようです。
地下鉄でトラブルに遭って、トラウマが形成され PTSD となった人は、地下鉄に限らず電車に乗れなくなったり、地階に行けなくなったりもします。
地下鉄だけに反応するのではなく、それに関連したものにも反応してしまう。
これは、汎化の困った面が引き起こした心理現象ということです。
PTSDが汎化するのはどんなときかを調べた実験
先日、動物実験で、PTSDの治療には、「タイミング」と「状況」が大事であるということが分かったという論文が発表されました。
筑波大学他の研究グループによる、マウスを使った実験です。
マウスに3つのケージを用意します。
ケージA:飼育しているケージ(かご)
ケージB:ケージAに似ているケージ
ケージC:ケージAとは全く異なるケージ
まず、ケージAでマウスが嫌う電気刺激を軽く与えます。
すると、その電気刺激がトラウマとなって、マウスはケージAに入れられただけで、怯えるなどの恐怖反応を示すようになりました。
ここまでは、条件付けが成立したというだけ。
次に、ケージAでマウスに電気刺激を与えて、その後、ケージAに似たケージBに移してみましたが、恐怖反応はあまり強くありませんでした。
ところがところが。
翌日は、ケージBでも恐怖反応を示したのです。
直後は大丈夫でも、一晩で汎化が起きたのですね。
実験では、最初の恐怖体験(電気刺激)から6時間後まではこの汎化が起きていたとのこと。
汎化は、トラウマ形成の直後で起きやすいということですね。
今度は、ケージAでの電気刺激の後、ケージBではなく、最初にトラウマが形成されたケージAとは全く異なるケージCに移してみました。
すると、直後も翌日も恐怖反応は起きませんでした。
全く違う環境では、汎化が起きなかったのです。
トラウマ体験直後は似たような状況を避けるべし
今回ご紹介した実験から、トラウマの汎化が起きやすい2つのポイントが分かりました。
1)トラウマ体験の直後
2)トラウマ体験と共通点が多い状況
PTSDの治療では、トラウマを受けた環境でも大丈夫であることに慣れてもらう暴露療法が施されることがあります。
間違った方法ではないのですが、心が強く傷付く体験をした直後は無理をせず、そして、しばらくは似たような状況を避けた方がよいでしょう。
ヒトでは、傷付く体験からどれくらいの期間が汎化を形成しやすいのかはまだ分かっていませんが、少なくとも自分の感覚でちょっと落ち着いたかな、という心理状態までは控えた方がよいでしょう。
そうしないと、今回の実験で示されたように、より多くの事物や状況にまで忌避反応を示すようになってしまいますから。
トラウマ体験直後は似たような状況を避けるべし、というお話でした。
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では、また!
(了)
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