他人のプレーを盗んで上達
私(武永)は20代の頃、よくテニスをしていました。
屋外で練習がコンスタントにできない冬季は、2ヶ月くらいコーチにレッスンを受けてたり。
コーチは60過ぎの「お爺さん」でしたが、55歳以上の全日本で何度も優勝した方。
全てのショットが正確無比。
ボールにかかる回転も尋常ではなく、スピンサーブも強烈にキックします。
そのコーチのテニスに心酔して、まるでスポンジが水を吸う如く、いろいろな技術を吸収させてもらいました。
そのコーチは、「習うだけでなく、自ら盗みなさい」とよく言っておられました。
レッスンを受けていないときでも時間があれば、スクールを訪れてコートの外からコーチのプレーを見て勉強させていただいたものです。
突然の訪問でも快く受け入れてくださり、休憩時間にはテニス以外のいろいろなお話も。
熟練者が初心者の下手なプレーを見ると下手に(実験)
「盗む」というのは、他人のプレーの見よう見まねです。
イメージトレーニングですね。
目で見た動きを自分の身体で再現すべく、脳で運動分析をして、動作のプランニングをするわけです。
こういったイメージトレーニングは、実際、どれくらい効果的なのでしょうか?
イメージトレーニングの影響をみるため、今のとは真逆の方法で、つまり、
熟練者が下手な人を見たらどうなるか?
という観点から調べた研究があります。
実験の対象とされたスポーツは、ダーツ。
ダーツの下手な人に協力してもらって、矢を投じるフォームを録画して、矢が刺さった所を記録しておきます。
そして、ダーツの熟練者に、先の下手な人が矢を投じるフォームだけ見て、矢が的のどの辺りに刺さるかを予想してもらいます。
その熟練者は、最初こそ予想できませんでしたが、答え合わせを繰り返すうちに予測できるようになりました。
さてさて、面白いのはここから。
その、下手な人のフォームを見て、矢が的のどこに刺さるかをうまく予測できるようになった熟練者に、自分でダーツのプレーをしてもらいました。
すると、なんと、自分のパフォーマンスが落ちてしまったのです。
下手な人のプレーを見るだけで下手になってしまうのでしょうか?
ちょっと別のパターンの実験もしています。
下手な人のフォームを見て、矢の行方を予測するところまでは同じですが、毎回の答え合わせをしませんでした。
下手な人のフォームを見るだけだとどうなるかを調べたわけです。
結果はと言いますと、熟練者のパフォーマンスに影響なし。
つまり、下手な人のフォームを見るだけでなく、その結果がどうなったかまで考えて、「しっかり」見てしまうと、ちゃんとしたイメージトレーニングになり、自分のプレーに影響してしまうのですね。
他人のプレーを見たときに脳で起こっていること
脳では何が起きたのでしょうか?
ダーツでは、ただ単にど真ん中を狙うわけではなく、状況によって的のいろいろな所を狙います。
熟練者の脳では、狙う的の位置によって、手をどう動かすかという運動プランが完成しています。
しかし、熟練者の脳で、下手な人のフォームと的に刺さる所がリンクしてしまうと、その完成した運動プランが乱されてしまい、結果として、自分のプレーに悪影響が出てしまったというわけです。
見よう見まねで盗むなら、熟練者のプレー。
下手なプレーは脳が混乱してしまうので、しっかり見てはいけません。
これ、スポーツに限ったことでもありませんね。
【原論文】
脳科学でビジネスライフを快適に!
では、また!
(了)
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