時間管理術やタイムマネジメントには様々なノウハウがあります。
そもそも脳がどう時間を感じるかを考えないとバラバラなテクニックに終わってしまいます。
時間感覚の不思議をちょっとだけ見てみましょう。
空間を分割すると長く見える、のでしたね
以前、空間を分割すると長く見えるという、オッペル・クント錯視について書きました。
武永隆の脳ブログ「ボーダーの方がスリムに見えることもある ~オッペル・クント錯視~」
このような錯覚はたくさんあるわけですが、
ヒトの認識が外界の情報を客観的に処理しているわけではないことがよく分かります。
脳の情報処理にはクセがあります。
そのクセを把握しておくと、いろいろ役に立ちます。
自分の体や脳で確かめられるのが、脳科学の面白い点でもありますね。
ちなみに、オッペル・クント錯視は、オッペルさんが1854年に発見して、
その後、クントさんが詳しく調べたことから オッペル・クント錯視 と併記して呼びます。
オッペルさんは、よく知らなくとも、クントさんはどこかで聞いたようなお名前。。
そうです。
物理がお好きな方なら、音波の実験に出てくる「クントの実験」の物理学者のクントさんです。
アウグスト・クント(AAEE Kundt, 1839-1894)
音波の実験で、筒の中にスピーカーで音を入れて、
音の高さに応じた定在波が出来るのを可視化したりするアレですね。
時間も分割すると長く感じる
オッペル・クント錯視は空間の分割ですが、時間を分割しても同じような事が起きます。
音で考えてみましょうか。
短く「ピッ」という音を2回鳴らすと、その音で区切られた時間が作れます。
ここで、オッペル・クント錯視と同じように、その最初の「ピッ」と最後の「ピッ」の音の間に、
何個か「ピッ」と音を鳴らして、時間を分割してみます。
すると、そのように分割した方が長く感じることが分かっています。
これを、分割時呈錯覚と言います。
オッペル・クント錯視のように、時間も分割すると長く感じるのですね。
時間を感じるための専用感覚器はない
時間には、専用の感覚器がありません。
これ、当たり前のようで、ちょっと考えると不思議です。
ヒトの5感と専用感覚器について見てみましょう。
・視覚 ー 目
・聴覚 ー 耳
・触覚 ー 皮膚
・嗅覚 ー 鼻
・味覚 ー 舌
このように、感覚種には、それぞれ対応する専用の感覚器があります。
そして、脳には、それぞれの感覚に特化して情報処理する感覚野があります。
視覚野は後頭葉に、聴覚野は側頭葉に、といった具合に。。
では、時間はどうでしょう?
時間の長さを区別することはできますが、特定の感覚器はありません。
脳のどこかが計っているわけですが、そのメカニズムはまだ世界の誰も知りません。
特定の感覚器がないことも影響して、脳でどうやって時間の長さを計っているのかを
調べるのが難しくなっています。
前頭前野、頭頂葉、大脳基底核、小脳などが何らかの形で変わっていることは分かってきましたが。
時間は刺激がなくても感じられる
先ほど、時間を作るときにピッという短音2つで区切りました。
ちょっと考えると、別に区切らなくても、ピーーーーッと音を出し続けてもよいはず。
確かに、そうです。
ですが、我々、時間の研究者はそれらを区別して扱います。
・空虚時呈:2つの短音で区切る時間長
・充実時呈:音を出し続けた時間長
これも、ちょっと考えると面白いです。
なぜかと言いますと、大抵の刺激は、刺激があるから感じますね。
匂いなら、匂いがある間は感じられますが、匂いがなくなると感じられなくなります。
触覚もそう。触られている間だけ感じます。
しかし、時間は空虚時呈のように、刺激がなくとも感じられるのです。
何もなくても、ある。
不思議ですね。
時間の長さは処理した情報量?
時間の基本的な錯覚について、もう一つ書いておきます。
先ほどの空虚時呈と充実時呈ですが、サクッと申し上げますと、
空虚時呈よりも充実時呈の方が長く感じるということが分かっています。
音がない時間よりも、音がある時間の方が長く感じるのですね。
そう言えば、
時間の長さを分割すると長く感じる分割時呈錯覚も、分割することで情報量が多くなっていますね。
これは、処理する情報が多いほど、時間が長いと感じるのではないか、と考えられています。
時間の長さの感じ方には処理した情報量も大いに関係すると考えられているのです。
「時間」は古来から哲学的な大問題でもありますが、日常生活で感じる不思議もたくさんあり、
脳との関係から見ても不思議なことだらけです。
時間感覚は、時間管理術のルーツ。
いろいろな時間管理術を小手先のテクニックに終わらせず、体系化したり実践しやすくするためにも、
そもそも脳は時間をどう感じているかを考える必要があります。
時間と脳の関係、また触れていきますね。
脳科学でビジネスライフを快適に!
では、また!
(了)
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