このブログで最近続けて取り上げている「損失回避」は普遍的にみられる頑強な心理現象です。
これはなかなか損切りできない原因にもなっています。
困った心理現象ですが、ある種の人々は、あまり強くはたらかないということも分かっていて、
それを応用することで、損失回避も回避できます。
損失回避に囚われないトレーダー
実験で調べられた例で言いますと、カードトレーダー。
男児がよくやるカードゲームの大人版プレーヤー、みたいな感じです。
昔は野球カードが流行っていましたね。
私(武永)も少し集めていました。
お菓子のオマケだったと思いますが、カード単体で買えたりもします。
では、そのカードトレーダーと損失回避がどう関係するのでしょうか?
実験をみてみましょう。
あるカード交換会の会場でアンケートに協力してくれたらマグカップ(または、チョコレート)を
プレゼントするとして、目の前に置き、トレーダーに記入してもらいました。
この時点では、トレーダーは、目の前に置かれた物がもらえると思い込んでいます。
そして、記入が終わった帰り際に、実はプレゼントはマグカップとチョコレートを用意していたのでどちらを選ばれても構わないと伝えます。
すると、交換に応じたのは、トレーディング歴の浅い人たちでは 18% だけでした。
ところが、ベテランとレーダーは 48% だったのです。
どういうことでしょうか?
交換に慣れているベテラントレーダーは、2つの価値を客観的に判断することに慣れていて、
プロスペクト理論の言う、価値の非対称性が弱く、損失回避が強くはたらかなかったため
と考えられます。
John A List (2003)
“Does market experience eliminate market anomalies?”
Quarterly Journal of Economics 118: 47-71.
http://users.nber.org/~rosenbla/econ311/syllabus/listendowmenteffect.pdf
コンコルド効果
損失回避の心理はマイナス面にはたらくことが多いです。
その一つが、損切り。
損失回避が強いと、損切りのタイミングも遅くなりがちです。
ここで、コンコルド効果も思い出しておきましょう。
コンコルドは昔飛んでいた超音速旅客機。
イギリスとフランスが共同開発しました。
音速の2倍、マッハ2で飛行。
ジャンボ旅客機がマッハ0.8ですから2倍以上の速度で飛んでいたわけです。
1976年から定期運行していましたが、音速を超えるときに出てしまう騒音(ソニックブーム)など
の問題もあったりして、要は採算が合わなくなり、就航路線が縮小されます。
2社のみが使用し続けましたが、結局、2003年に営業飛行終了。
ということで、コンコルド効果とは、採算がとれなくなってしまっても、それまでの巨額の投資が
惜しくて投資をやめられない心理現象の意味で使われます。
最近では、同じ意味で、サンクコスト(sunk cost)という用語もよく耳にします。
ちなみに、先日、エアバス社が新たな超音速航空機の特許を取得したというニュースがありました。
マッハ4.5(時速約5,300km)で、東京ーパリ間が3時間かからないそうです。
コンコルドの反省を活かしたそうですので、コンコルドーエアバス効果とならないことを
期待しましょう。
ちゃんと損切りして、軽やかに
もったいないからといって、無闇に持ち続けると負担になります。
損失回避で、人は無意識のレベルでもったいないと思ってしまいます。
これは、ビジネスでも個人的な生活面でも同じこと。
冒頭でご紹介した実験のように、習慣や心がけよって頑強な損失回避の心理を抑えられます。
捨てる勇気と客観的な価値判断を心掛けて自身の損失回避の心理作用を弱めると、
損切りもしやすくなります。
損失回避に打ち勝って、ちゃんと損切りして、軽やかに行きましょう。
脳科学でビジネスライフを快適に!
では、また!
(了)
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