ご褒美は、何か達成した後にあげるもの。
そう考えるのが普通ですよね。
でも、インセンティブとしてはイマイチだったりします。
どういうことでしょうか??
損失回避とは
ちょっと前のこと。
何気なしにテレビを見ていたら、芥川賞作家のピース又吉が画面に。
Eテレの「オイコノミア」という経済学の番組で、インセンティブがテーマでした。
シカゴで行われた、約6,500人の小中学生を対象としたインセンティブの実験を紹介していました。
具体的な学年は 2nd ~ 8th grade なので、日本では小学2年~中学2年でしょうか。
どんなインセンティブが成績を上げるかというのを調べています。
1.成績がよかったら、お金を20ドルあげる
2.お金を20ドルあげておいて、成績が悪かったら返してもらう
3.成績がよかったら、トロフィー(3ドル相当)をあげる
4.トロフィーをあげておいて、成績が悪かったら返してもらう
子どもたちの成績が上がったのは、どれだと思いますか?
下級生(2nd~4th grade)は、4が一番でお金よりも効果的だったそうです。
上級生(5th~8th grade)は、2のお金が断トツに効果的だったとか。
やっぱり、上級生ともなると、物よりお金ですよね。
大事なのは、下級生と上級生に共通して、ご褒美を先にあげておいてから、テストが悪かったら
返してもらうのをインセンティブにしたのが効果的だったこと。
これを、心理学では「損失回避」がはたらいたと考えます。
同じもの(金額)でも、もらうプラスの効果より、先にもらっておいてから奪われるマイナスの
効果の方が大きいのです。
また、シカゴの実験では、ご褒美をあげるタイミングも調べています。
遅過ぎると効果がなく、その傾向は女子よりも男子の方が強かったそうです。
男子はせっかちな生き物なのですね。
ちなにみ、「オイコノミア」とは、エコノミクス(経済学)の元になった古代ギリシャ語だとか。
面白い番組ですので、気が向かれたらご覧ください。
毎週月曜 午後10時~10時45分
NHK Eテレ「オイコノミア」
カーネマンのプロスペクト理論
子どもを対象とした実験で、先にご褒美をあげると強いインセンティブになったのは、
損失回避の心理がはたらくからということでした。
これは、もちろん、子どもに限ったことではなく、大人でも同じことです。
損失回避は、ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学の雄、カーネマンのプロスペクト理論という
選択モデルに組み込まれています。
カーネマンの例を見てみましょう。
1)あなたは、1,000ドルもらいました。次の A)と B)のどちらを選びますか?
A)当たりが1/2のクジで、当たればもう1,000ドルもらう
B)確実に、500ドルもらう
2)あなたは、2,000ドルもらいました。次の C)と D)のどちらを選びますか?
C)当たりが1/2のクジで、ハズレなら1,000ドル失う
D)確実に、500ドル失う
上記の4パターンは全て、期待値としては、1,500ドルになります。
しかし、実際には、1)では B)を選び、2)では C)を選ぶ人が多いのです。
2)で C)を選ぶのは、2,000ドルもらった状態が参照点になって、
そこから損失回避するためとされます。
プロスペクト理論では、同じ差でも、参照点からプラスとマイナスとでは、
マイナスの効果が大きくダメージが強いという非対称性を、損失回避の心理にリンクして考えます。
Daniel Kahneman and Amos Tversky (1979)
“Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk”
Econometrica 47(2): 263-291.
それでは、同じ差でプラスをどれくらい大きくするとバランスするでしょうか?
例えば、以下のようなコイン投げのギャンブルに参加されますか?
・表なら、1,000円払わないといけない
・裏なら、1,200円もらえる
これくらいの差では、参加する人ままだ多くないようです。
では、どれくらいなら参加してくるかというのをいろいろな実験を通して調べてみると、、
損失の2倍の儲けが見込めるとギャンブルに乗る人が増えてくるということが分かったそうです。
つまり、上のコイン投げの例ですと、「裏なら、2,000円もらえる」となったら、ということです。
損失回避を応用してみよう
例えば、子どもに頑張ってもらうインセンティブでよくあるのは
・お子さんのテストの点数がよかったら
・習っているスイミングでよいタイムがでたら
・お手伝いをよくやってくれたら
お子さんにご褒美をあげるというパターンですよね。
損失回避の心理を考慮しますと、真逆の方法ということですから、
「先にご褒美をあげておいて、ダメだったら取り上げる」
がよいことになります。
ただ、このやり方は、親としてもちょっと勇気が要ります。
まあ、欲しい物は何かと聞けば、答えるのは遊び関係のものでしょう。
それを先に与えてしまうと、それに時間を使ってしまって、
本来頑張って欲しいことをしくれなさそうな気が、いや確信が(笑)。
さらに、取り上げるときの修羅場が目に浮かびます。
だからこそ、効果があるのでしょうけど。。
子どもだけでなく、大人の仕事に適用してみてはどうでしょうか?
「先に報奨金をあげておいて、成績が悪いと返還させる」 みたいな。
これは、確かに嫌ですよね。
部下の方々もしっかり働いてくれるかもしれませんよ。
そう言えば、源泉徴収も損失回避を逆手に取ったうまい方法と言えます。
収入として財布に入って、それから税金として払うことになったら、損失回避の心理がはたらいて、
税金の使い道が注視されることになりますから。。
話を戻しまして。。
もっと試しやすい応用は、自分に対してやってみることかもしれません。
ご自身のノルマや資格試験に対して
「先にご褒美を買っておく」
というのは試してみる価値がありそうです。
さあ、どんなご褒美を買いましょうか?
(了)
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