笑顔は信頼の証しでもある

 

ウルトラマンのアルカイック・スマイル

７月７日は特撮の神様、円谷英二氏の誕生日。

先日のテレビ東京系「美の巨人たち」は、円谷プロダクションの「ウルトラマン」でした。

成田亨「MANの立像」（2015／7／4）

ウルトラマンは、彫刻家の成田亨氏のデザインによるもの。

子ども番組だからこそと、手を抜かず真摯に取り組まれたのだとか。

印象的だったのは、ウルトラマンの口元が笑みをたたえていたこと。

ウルトラマンは子どもの頃から見ていましたが、気付きませんでした。

成田氏は次のようにおっしゃっています。

「本当に強い人間はね、戦うときかすかに笑うと思うんですよ」
成田亨著『特撮と怪獣　わが造形美術』より

ウルトラマンの笑みはギリシャ彫刻を源流としたアルカイック・スマイルをヒントにされたそうです。

笑顔は強さにもつながる。なるほど。

 

笑顔は信頼獲得の武器であることの実験的証拠

笑顔は、コミュニケーションをとる上で基本中の基本。

円滑なコミュニケーションに大事なだけではありません。

信頼性にも大きく関わることが心理実験で確かめられています。

その心理実験をご紹介しましょう。

 

被験者（120名）はパソコンを使って２択の選択を求められます。

別室にいるペアと取り組むように教示されていますが、実際にはそのペアの相手は実在せず、各被験者が一人ずつ取り組みます。

進めて行く２択は以下の通り。

a）被験者は１ポンド、ペアの相手は 0.5 ポンドもらえる
b）新たな選択をペアの相手に一任して、その相手は以下の２択で選択する

c）被験者は 0.8 ポンド、ペアの相手は 1.25 ポンドもらえる
d）選択の権利を被験者に戻して、その際の２択は以下のとおり

e）被験者とペアの相手ともに 1.2 ポンドもらえる。
f）被験者とペアの相手ともに 1 ポンドもらえる。

最初の選択で a）を選択すると、被験者は１ポンドもらえます。

b）を選択すれば、1.2 ポンドもらえるかもしれませんし、最低でも１ポンドはもらえるわけです。

つまり、ペアの相手を「信頼」に値する人ならば、自分も得をするようになっています。

しかし、その期待に反して、ペアの相手が c）を選択すると、被験者は 0.8 ポンドしかもらえないこともあります。

ジレンマですね。

 

この実験のミソは、別室にいるとされるペアの相手の顔写真を事前に見せられていること。

その顔は、無表情の男性、笑顔の男性、無表情の女性、笑顔の女性の４パターン。

実験の結果、相手の顔が笑顔だと、相手を信頼する選択の確率が上がったのです。

下記の数値は、a）と b）で、a）を選んだ確率。つまり、相手を信頼した確率です。

例えば、被験者の全員がペアの相手を信頼していれば１、五分五分なら 0.5、全く信頼していなかったら０となります。

結果の詳細は以下の通り。

 

被験者（男）　相手の写真＝笑顔（男）　　0.739
被験者（男）　相手の写真＝無表情（男）　0.565

被験者（男）　相手の写真＝笑顔（女）　　1.000
被験者（男）　相手の写真＝無表情（女）　0.667

被験者（女）　相手の写真＝笑顔（女）　　0.429
被験者（女）　相手の写真＝無表情（女）　0.286

被験者（女）　相手の写真＝笑顔（男）　　0.625
被験者（女）　相手の写真＝無表情（男）　0.583

 

どのケースでも、相手の写真が笑顔であれば、相手を信頼する確率が高くなっていますね。

面白いのは、被験者が男性のとき、相手が女性で笑顔なら100%信頼していること！

世の男性は、なんて女性の笑顔に弱いことか。。

一方で、被験者が女性のとき、相手が笑顔でも信頼する確率が五分五分以下で、無表情なら 0.286 と信頼度がグッと下がったのも興味深いです。

女性は、女性に対して厳しいのですね。ちょっと怖いくらいに。。

このデータ、現場に応用できるヒントになりますね。

 

より効果的なのは異性の笑顔

コミュニケーションの基本とされる笑顔は、相手からの信頼を得る効果もあることが実験で確かめられたわけです。

特に、異性の笑顔が効果的なようです。

中でも、男性に対しては女性の笑顔が効果的ですので、接客や交渉の際には留意しましょう。

信頼性は買物や契約で、とても重要なファクターです。

心に余裕をもって、笑顔で接客や交渉に望みましょう。

 

最後に、カーネギーの言葉を。

笑顔は1ドルの元手もいらないが、100万ドルの価値を生み出す
（デール = カーネギー）

 

【参考論文】
Scharlemann JPW et al. (2001)
“The value of a smile: Game theory with a human face”
Journal of Economic Psychology 22: 617-640.

 

（了）

 

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