顧客満足度を高めてリピートしてもらう。
とても大切なことですね。
満足度を高める方法の一つをご紹介します。
結論から言いますと、
「お客さん自身に選択肢の中から選んでもらうこと」
自分で選ぶと自身が前向きな気持ちになることが実験で分かっているのです。
商品やサービスを選ぶときは、基本的には自分で選びます。
ただ、詳しくなかったり、選ぶ対象の選択肢がたくさんあると、どれを選ぶべきか分からなくなり、詳しい人に頼りたくなるもの。
そんなとき、提供する立場としては、これ!というものを提案することで、お客さんにご満足いただきたい気持ちになりますね。
でも、その気持ちを少し抑えて、お役さんご自身に選んでもらうように意識しましょう、ということなのです。
自分で選ぶか否かによる影響を調べた実験
最近、発表された脳研究の実験をご紹介しましょう。
ストップウォッチで時間の経過を見ずに10秒ちょうどで止める遊び、をしたことありませんか?
脳で時間を計るわけです。
1秒でも5秒でもよいのですがピッタリに止められると嬉しいものです。
スマホのアプリも出ていたり、そんなゲーム専用のオモチャまで出ているようですね。
ちなみに、脳がどうやって時間を計っているかというのはほとんど解明されていません。
実験では、被験者に5秒ちょうどでストップウォッチを止めるゲームをしてもらいます。
0.05秒差までを成功としていて、成功率は50%くらいだったとか。
そして、この実験のミソですが、いろいろなデザインのストップウォッチを用意しておいて、
それを被験者が自分で選んだ場合
実験者から与えられた場合
で、ゲームの成績と、脳の活動を比較したのです。
その結果、ストップウォッチを自分で選んだときの方が成績もよく、実験後に感想を聞いても9割以上の被験者が楽しかったと答えました。
やはり自分で選ぶと、ポジティブに取り組めて成績もよかったのですね。
自分で選んでもらったときの脳の活動
そこまでは心理学の領域。脳科学はその先を行きます。
じゃ、脳のどこが関係しているの?と。
脳科学の方が優れていると言いたいわけではなく、いろいろな脳領域の機能が分かりつつありますので、それらの知見と符合すればより強固な証拠となります。
心理学も脳科学もどちらも大事で、双方の強みを活かして考えて行くべきですよね。
先ほどの実験の続きで、ジャスト5秒のゲームをしている間の脳の活動をfMRIという装置を使った脳機能イメージング法で調べています。
その結果、失敗したときには、ストップウォッチのデザインを自分で選んでも、実験者に決められても、脳の深いところにある腹側線条体の活動が低下しました。
線条体は大脳基底核の一部で、快楽を感じたときに活動が強くなる報酬系の一つで、失敗したときに活動が低下するのは予測通りの結果と言えます。
面白いのはここから。
失敗した試行で、ストップウォッチを自分で選んだ場合と実験者に決められた場合を比べたときに、活動が異なる脳領域が見付かりました。
それは、腹内側前頭前野(vmPFC)。
vmPFCは、おでこの真ん中の奥辺りの脳領域で、事態を前向きに捉えたり、やる気を出したりすることに関わることが分かっています。
また、vmPFCが障害されると、目先の利益にとらわれるとか、失敗に学べないということも確認されています。
つまり、自分で選んだストップウォッチを使うことで、たとえ失敗しても前向きに捉えて取り組むことができたというわけです。
ちなみに、この実験は玉川大学の研究グループが中心となって行ったものです。
Murayama et al. (2013)
“How Self-Determined Choice Facilitates Performance: A Key Role of the Ventromedial Prefrontal Cortex”
Cerebral Cortex 25(5): 1241-51.
doi: 10.1093/cercor/bht317
自分で選んでもらうことの効能は他にもある
たとえ、お客さんが迷っておられて、あなたに任せるとか言われ、このお客さんにはこれしかない、これがベストだ、と思うことがあるでしょう。
そんなときでも、複数の選択肢を用意して、お客さん自身に選んでいただくことが大事なのですね。
複数の選択肢を提示するのは、お客さんがどんなものを求められているか不確定な要素があるからというだけでなく、先ほどの実験で示されたように、自分で選んだという体験がプラスのイメージにつなげてくれるからなのです。
さらには、仮に、後々、その買物が失敗に思われ後悔しそうになったとしても、前向きに捉えてもらえたことで正当化につながり、クレームにもつながりにくくなります。
買ったときだけでなく、その後も末永く保証してくれるのですから見逃せないポイントですね。
(了)
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