パーソナルスペースを意識してますか?

投稿者: | 2015年6月3日

 

コミュニケーションで意外と大事な要素

コミュニケーションというと、話す言葉がメインな要素と思われがちです。

例えば、分かりやすく伝えるために、ロジカルシンキングを鍛えよう!とか。

確かに、支離滅裂では困りますが、コミュニケーション全体から見ると小さい問題です。

それより大事なのが表情だったりすることは多くの方がお気付きのことでしょう。

笑顔で応対するのと、仏頂面で応対するのとでは、すでに結果が見えますね。

他に何か思い付きますか?

いろいろありますが、今回は「距離」を考えてみましょう。

他の人との間に取る物理的な距離のことです。

距離の取り方次第で、相手に与える印象も意外に大きく変わります。

誰かと話していて、思ったより距離を取られると、

あれ? 避けてるのかな?

早く話を終えてどこかに行きたいのかな?

と感じますよね。

違和感がないとか、居心地がよいと感じる距離は人それぞれです。

それぞれの人でも、相手との関係や話す内容によっても変わってくる繊細なものです。

居心地がよい距離より近くに来られると不快に感じます。

縄張りのようなものとお考えいただけると分かりやすいかもしれません。

 

ある教授との思い出

以前、私(武永)が脳科学の研究会に出席したときのこと。

懇親会で、高名な教授と1対1で話をさせていただくという機会がありました。

そのこと自体はよかったのですが、問題はその教授の距離感。

グッと近くに寄って話されるのですね。

私(武永)は仕方なく、気付かれないよう徐々に後退を試みました。

しかし、すぐに距離を詰められ、ほどなく背中が壁に(泣)。

壁にぴったりくっ付いた状態で、しばし「歓談」。

他の人が見たら、さぞかし異様な光景だったでしょうね。

その教授は、縄張り空間が狭かったのでしょうね。

 

パーソナルスペースと脳

心理学では、この縄張り空間をパーソナルスペースといいます。

対面で話をするときだけでなく、他の人との間に取る距離一般に適用されます。

1966年、アメリカの文化人類学者のエドワード・ホールは、ヒトの周りの空間を4つに分けました。

1)密接距離( 0cm ~ 45cm )
2)個体距離( 45cm ~ 120cm )
3)社会距離( 120cm ~ 3.5m )
4)公共距離( 3.5m 以上 )

2)の個体距離がパーソナルスペースにあたります。

向き合った人がお互いが手を伸ばすと届く距離です。

このパーソナルスペースに強く関係する脳領域も分かっています。

それは、扁桃体(Amygdala)

脳の深い所にあるアーモンド形のニューロンの集まりです。

扁桃体は、情動や社会的認知に関わり、他人が近付いて不快に感じると扁桃体の活動も強くなります。

また、扁桃体にダメージがあると、人と人の距離感覚がなくなるということが実験で分かっています。

Kennedy et al. (2009) “Personal space regulation by the human amygdala” Nature Neurosci 12: 1226-1227.

 

パーソナルスペースをコミュニケーションに応用

例えば、対面販売で考えてみましょう。

接客に辟易しているお客さんに、下手に話しかけると逃げられてしまいます。

なかなかこちらに向いてないお客さんですね。

こちらを向いてくれないのに、ボールを投げても(話しかけても)、受け取ってくれません。

ボールを投げる(話しかける)前に、こちらを向いてくれるかどうかの判断をすべきなのです。

※ 「ボール」の話は こちら をご参考ください。
武永隆の脳ブログ「脳は球技をしている」(2015年5月20日)
武永隆の脳ブログ「伝える情報はシンプルに ~ストループ効果で検証」(2015年5月21日)

接客が上手な方というのは、経験を通して空気が読めるので、話しかけて大丈夫なお客さんかどうかが自然に判断できてしまいます。

しかし、大抵の人にとってはそのような判断をするのは簡単ではありません。

では、どうやって判断すればよいでしょうか?

ここで、パーソナルスペースの出番です。

パーソナルスペースは、状況によっても変わります。

話かけられてもよいときは、パーソナルスペースを狭くして相手を許容し、近付くと表情を緩めて、話しかけに応じてくれます。

一方、話しかけれたくないときは、パーソナルスペースを広くとって他人の侵入を排除します。

つまり、ツカツカとお客さんに歩み寄っていきなり話しかけるのではなく、何気なく接近を試みてお客さんの反応を見定めるのです。

ちょっと近付いただけで、そっぽを向いて距離を取られたら脈はありません。

もし、お客さんがこちらを避けようとしなければ脈があるかもしれませんので、軽くお声がけしてみるとよいですね。

接客に限らず、対面で話をするときには、会話をしながら適当な距離感を掴むようにしましょう。

 

おまけ

ちなみに、女性のパーソナルスペースは男性より狭い、つまり、女性は相手が近くても大丈夫な傾向にあるようです。

ですから、女性が近くで話してくれるとお感じの男性陣、喜ぶのは早いかもしれませんね。

女性はあなたに好意を持っているというよりも、単にパーソナルスペースが狭いから近くで話をしてくれただけ、という可能性が高いからです。

余計なことを言いました。。(笑)

 

(了)

 

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